[DBデザイン#4] 実例から考える: 前提となる業務

今回から、数回に分けて、データベース設計をするときにどこに注目するのかを考えることにします。一応、「分かりやすい」業務を架空の会社でおこなっているという想定です。もっとも、そういう架空の設定そのものが、いかにも記事をそれらしく見せるためのわざとらしい前提に見えるかもしれませんが、やはり現実の世界そのままはなかなか複雑で理解しづらいですし、現実には「要求が不明あるいは曖昧である」という問題との対峙が非常に難しいところになります。なので、問題を単純化したいと思います。

データベース設計の1つの肝は、「1レコードに相当する単位あるいは概念の特定」だと考えます。そのために、どんなフィールドが必要かを集めて分類などを行うと思いますが、1レコードの特定が設計の1つの目標になります。そこに至るまでに、表にして考えるということをまずはこの実例で見ていっていただきたいのですが、表が出てくるのは次回以降になります。まずは、ロボット製造販売を行うような会社がありますという前提の説明をしましょう。あえて非現実的にするために、おもちゃロボットがなぜかヒットしたという会社を考えます。画像素材は誰が見てもご存知のイラストやさんです。ありがとうございます。

まず、この会社には営業部門があります。製造したロボットを、卸売や大手小売業者に販売します。営業部門では、「ロボットさんま1号 x 24個」のように、この会社の商品を、通常は複数個まとめて出荷するという作業を行います。営業部門が考える関心ごととは、ともかくたくさん販売して、売上を伸ばすことです。また、季節性のある商品や何かイベントなどでの売上の波が来そうな場合に、別の部門との折衝を行なって在庫確保などもしているかもしれません。

一方、この会社には製造部門も持っています。製造はどうやら外注していないようです。製造部門は、当然ながら、商品を1つずつ作ります。まとめてどこかに在庫しますが、どうやら出荷計画を作ってそれに基づいて製造をするという大きな流れを持っているようです。この部門の関心事は不良品がないなどの製品品質を高めることが大きいようです。

さらにマーケティング部門もあります。マーケティング部門なので、現状の商品を訴求するためのさまざまな活動が行われていますが、一番大きなミッションは新たな市場を作るということを経営側から命じられています。この部門にとっては、商品1つ1つは関心ごとではなく、商品という大きな概念そのものを扱っていると言えるでしょう。

もちろん、この会社には経営陣がいます。もちろん、経営陣は会社の収益を確保し高めることが一番の関心事になりますが、どうやらこの会社はハイテクな商品を作っているように見えて、情報システムは部門ごとに作ってしまっているようで、連携はしていないようです。

このような会社で、部門にまたがって使える業務システムを設計するということが発生しました。ということで、設計を進める上で何を考えるかということを考えてみたいと思います。これくらいの内容なら、すぐに作れるよとおっしゃる方もいらっしゃるでしょうけど、そういう方が頭に即思い付くような「テーブル構成」がどのように導き出されるのかを、「表を作ってみる」というアクションから考えてみたいと思います。