表題の通りの仕組みを、INTER-Mediatorに組み込もうとして、2日ほどもがきました。RSAつまり秘密鍵と公開鍵を使った暗号化をフレームワークに組み込み、クライアントで入力したパスワードを、暗号化してサーバに送るという仕組みを組み込んでいます。普通パスワードはハッシュだろうと思われるかもしれませんが、フレームワークが認証するパスワードではなく、パスワードをデータベースエンジンへのアクセスに使うべく、クライアントで入力したものをバックエンドまで安全に到達させるための暗号化なのです。
RSAやハッシュ関連のことは、ネイティブな開発ならOpenSSLを使えばおおむねOKなので、同じようにライブラリを集めれば楽勝だろうと思っていました。また、PHPにはopensslライブラリがあるので、まあ、なんとかなるだろうと思いました。要件としては、キーの指定を簡単にするということ。つまり、公開鍵と秘密鍵が1つもPEM形式で得られれば、それを設定ファイルに書き込むことでキーの指定ができるということです。もちろん、生成は「openssl rsagen 1024」みたいなコマンドで簡単に済ませたいわけです。
JavaScriptの世界では、Dave Shapiroさんが作っているライブラリがあり、後々のいくつかのライブラリの多くはこれを改良しています。DaveさんのはPEM形式でキーを与えられないので、Tom WoさんのCrypticoが作られたようで、さらに別の人が署名までできるようにしています。Crypticoでいろいろやっていたのですが、うまくいかない…というか、単純にこのライブラリの問題ではなく、PHPのライブラリとの組み合わせの問題があったのです。
それで、PHPの方はというと、openssl関連関数があるので大丈夫かと思っていたら、これがなかなかうまくいかいないのです。まず、PEMでキーを与えるのが原則とすれば、Crypticoを使ってクライアント側で暗号化するのが手軽です。それを、PHPのopensslの関数で復号するのがどうしてもうまくいかないのです。そのあたりのドキュメントが今ひとつ詳しく書いておらず、コメントには「マニュアルは正しくない…」などと書いてある始末で、あれこれやってもだめでした。
ただし、PHPのopensslの関数を使えば、PEMの鍵データから、RSAの本来の鍵というか、計算式に出てくる鍵の数値をそのまま得られる事がわかりました。さらに、RSA: Encrypting in JavaScript and Decrypting in PHPというドンピシャなものがあったのですが、それはDave Shapiroさんのライブラリを使っていて、RSAの本来の鍵を使う方法が記載されています。ところが、このサイトに書いてあるPHPのライブラリはpearにあるCrypt_RSAで、説明に使っているものはすでのメンテナンスがなされていません。それを使う手もありますが、メンテナンスされているライブラリの方がいいかと思い新しいサイトへのリンクを見ると、なんとこれが、以前このblogでも紹介したPHPだけで作られたSSHのライブラリを含むphpseclib:に移行していたのです。SSHのライブラリはきわめて順調に動いたので期待をして、こちらのRSAを使って復号しようとしました。しかしながら、どんなにこねくり回してもだめなのです。このライブラリのサポートのBBSにあるこの書き込みと同じ場所でエラーが出ているようです。Macだとだめで、debianだと動くようなことが書かれているのが気になるところですが、この方法でうまく流すには簡単には行きそうにありません。
Dave Shapiroさんのライブラリで暗号復号するのはできます。また、phpseclib:で暗号復号はできます。つまり、異なるライブラリをまたいでの暗号復号がうまくいかないのです。Dave Shapiroさんのライブラリで暗号化したものを、opensslコマンドで復号してみると、パディングに関するエラーが出て復号できません。データ形式の微妙な違いがあるのでしょうか? ドキュメンテーションの薄いライブラリや、あまりカスタマイズできないライブラリということで、これ以上手を下すことができず、ここで行き詰まってしまいました。
それで、改めてググって必死に探した結果、見つけたのがbi2phpというライブラリで、しかもMIT Licenseです。JavaScriptのライブラリは、Daveさんのものに独自に改良したものだそうです。それと互換でPHPのクラスを作ったというところでしょうか。いずれも、RSAの本来の鍵を指定するのですが、「データは全部HEX」というように、ある意味非常にわかりやすく、さくっとうまく行きました。
ということで、わかった事をまとめておきます。RSAの秘密鍵、公開鍵という仕組みはもういいとして、そこで使う鍵は、たとえば「openssl genrsa 1024」というコマンド入力で作られます。そのデータはPEMという1つのテキスト列であり、いわば、そこに秘密鍵と公開鍵などなど、RSA暗号処理に必要なデータがPKCSのルールに従ってパックされたものです。
$ openssl genrsa 1024
Generating RSA private key, 1024 bit long modulus
...................++++++
............++++++
e is 65537 (0x10001)
-----BEGIN RSA PRIVATE KEY-----
MIICXwIBAAKBgQC/BlONnPUfSc95YmrcOUV0IbmeBZvibbAssetKBXAG0DGeKzc7
:
2MgfcIZ3C7lf0+yx3/RhXwJBAIYHkht7UPSpPeTvPzc4v89yBlkkGeN9xLbdONT3
uzINAQkGvVmDhNLYqxkgDysBUy/Q2f41DenUZJfEFLQBs5w=
-----END RSA PRIVATE KEY-----
PHP側では、このPEM形式の文字列を使って、以下のプログラムで、RSAの計算に使うキーを求めることができます。$generatedPrivateKeyにはPEM形式のキーの文字列、圧縮アルゴリズムがAESの場合はパスフレーズを入れるので、その場合は$passPhraseに指定しますが、パスフレーズが設定されていない鍵は2つ目の引数は適当に無視します。
$res = openssl_pkey_get_private( $generatedPrivateKey, $passPhrase );
$keyArray = openssl_pkey_get_details($res);
この、$keyArrayの配列にいろいろなものが入っていて、公開鍵だけを取り出すには、$keyArray[‘key’]とします。
Daveさんのライブラリを使うには、鍵のオブジェクトを作成しますが、当然、自分で生成するのではなく、このPEMを鍵としてオブジェクトを初期化します。初期化関数部分は、次のように定義されています。biRSAKeyPairが鍵のクラス名と考えていいでしょう。
function biRSAKeyPair(encryptionExponent, decryptionExponent, modulus)
ここで、encryptionExponentは$keyArray[‘rsa’][‘e’]、decryptionExponentは$keyArray[‘rsa’][‘d’]、modulusは$keyArray[‘rsa’][‘n’]から得られます。生成した鍵からopensslのコマンドを使って出力(例えば、openssl rsa -text -in gen.key)した結果を見ながら、対応付けを確認しました。配列から得られた結果はバイナリなので、PHPの場合、bin2hex関数を使って16進文字列にして、JavaScript側の引数に指定をします。2次元目のeとdは、encrypt、decryptなんでしょうね。
なお、INTER-Mediatorでは、JavaScript側では暗号化しかしないので、2番目の引数は指定しません。というか、指定してクライアント側で見えたらいけません。なぜなら、$keyArray[‘rsa’][‘d’]は秘密鍵であり、暗号化には使わないからです。いずれにしても、JavaScriptのプログラムをサーバ側のPHPで生成してクライアントに送り込むという部分がこうした処理を組み合わせて作る事ができます。
bi2phpのPHP側のクラスは、JavaScriptとほぼ同様なプログラムでいいようになっており、サンプルのHTMLを見ればプログラムの作り方はすぐにわかると思います。非常に紆余曲折がありましたが、JavaScriptとPHPの双方で暗号復号をするには、bi2phpというライブラリでOKということです。ただし、PHPのopenssl関数を使って、PEMから鍵の値を得たりということは処理として必要になるということです。このライブラリをまとめたAndrey Ovcharenkoさんに感謝するともに、ライブラリをここまで育て上げたみなさんに感謝します。