[IM]INTER-Mediatorはなぜ“会社”にしないのか?

このところ、INTER-Mediatorはなぜ会社にしないのかという主旨の質問を聞かれることが何度かありました。INTER-Mediatorに対して、「なぜ、会社にしないのですか?」「これだったら投資してもらえるのでは?」といった疑問を持たれるようです。ちょうどいい機会なので、新居が考えることを書いておきたいと思います。

まず、INTER-Mediatorもそこそこ出来上がってきており、これを元に仕事ができるレベルになっているのは確かです。新居自身、既にコンスタントにINTER-Mediatorを使った開発案件を抱えるくらいになりつつあります。としたら、一般的に考えられるのは、会社を作ってよりビジネスを広げることでしょう。また、投資が得られたら、ツールの開発などに取り組むことも現実的な作業として考えられるでしょう。しかし、新居自身は「INTER-Mediatorの会社」を作る意思は今の所ありません。

考えられる理想的な状況は、会社を作ってビジネスが軌道に乗るということではなく、次のようなことです。INTER-Mediatorはあくまで素材として存在し、それをベースにビジネスを行う会社が複数共存(連立か?)できるような状況が思想的だと考えます。1社の製品として、1社がコントロールする場合、まず、一定のシェアを確保しないと、ビジネスが存続しません。それは、言い換えれば他者を排除することにもつながります。もちろん、多大なシェアを目指すのも1つの手法ですが、既に数度の飽和をしているIT市場であり、いくつものビッグプレイヤーに1社で臨むのはかなり無理があると考えます。また、そうした一種の賭けをやると、終わりも視野に入ってきます。ビジネスの表舞台に立てるというのは魅力である一方、ダメになった時にはゼロ以下になってしまうということもあります。

INTER-Mediatorが目指すものは、システム開発プロセスの変革であり、その結果、情報システムを広げることでITのメリットをたくさんの人が、より多くの場面で享受できるようにすることです。もちろん、そうした意思はINTER-Mediator特有のものではなく、多くの人たちが様々な手法でチャレンジし続けています。INTER-Mediatorはその流れのほんの小さなインパクトにしか過ぎないものですが、理想を目指して継続させることこそが、何らかの貢献になるのではないかと信じています。そのためには、ビジネスのフィールドに軸足を突っ込むことは、リスクを増やすだけと考えています。

ただし、その一方で、INTER-Mediatorでビジネスをすることには肯定的に捉えています。自分も、業務システムの発注を受けていますし、エミックさんのようにFMPublisherというビジネス展開の一翼をINTER-Mediatorベースに進めていらっしゃる会社もあります。新居自身は、他の皆さんがビジネス展開する上で、必要であれば支援は行います。また、特定の会社だけでなく、原則として複数の会社に対しても支援しています。INTER-Mediatorのコアは「コミュニティ」だと考えています。そのコミュニティで培われたものを持ってビジネスフィールドに進出する人や会社は複数あって、それぞれが独自にアイデアを持ち、協業し、あるいは競合して、世界が広がればいいのではないかと考えています。コミュニティを中心にして、ビジネスフィールドが広がるというイメージです。そして、コミュニティの主体を、新居個人ではなく、Committeeにしたのも、そういう願いの1つの現れでもあります。

こうした手法は、オープンソースを主体にした団体の1つの生きる道だと考えます。例えば、Apache Foundationも、ある意味同様な立ち位置ではないかと考えますが、法人格云々となるといろいろなやり方があるかもしれません。しかしながら、コアコミュニティモデルとも言うべき、コンセプトとそれを実現する素材としてソフトウエア開発をコミュニティで行い、ビジネスを行う主体とは別に存在させることで、多彩な展開が実現することを願っています。したがって、INTER-Mediator株式会社を作る意思は今の所はありません。