消費税増税で忘れられていること

消費税が5%から8%、そして将来は10%になるという法案が政府によって進められています。現在、年間12兆円の消費税収入があるらしいのですが、いろいろな議論が巻き起こっているのも周知の通りです。その中でまったく議論が出てこないのが「免税業者」についての話です。

現在は、すべての取引(ただし非課税のものをのぞく)に消費税の徴収が義務とされているはずです。私は2005〜2008年は会社員だったのですが、その期間の前は、「あなたは免税業者ですか」と聞かれてから請求金額が決まるという会社が多かったことが思い出されます。免税業者なら5%付加しない金額で請求書を書き、その金額が払われてたのですが、会社員をやめてフリーになって改めて調べると、免税業者に対する支払いでも消費税を付加するのが必要という記述を税務署のサイトなんかで見つけました。世の中わかりやすくなったものです。会社員以前の消費税話もいろいろあるのですが、今現在の話をしましょう。

では、現在、免税業者になっている個人や法人はその付加された5%をどうしているかというと、単にその人や法人の収入になっています。免除されているので国に対して払う必要がなく、収入なわけです。つまり、借受消費税は単に収入としてあつかっていいことになっています。現在、免税業者としてメジャーなのは年間で1000万円以下の収入のある業者です。それから、会社設立してからの一定期間も免税業者です。零細企業の支援の側面もあるのかもしれませんが、比較的多いと思われるのが、サラリーマンをしながら副業でちょこっと儲けているような人も、その副業部分が免税業者扱いになっているのが多いのではないでしょうか。これは統計がないのでわかりませんが、会社員しながら1000万を超える売り上げがある人はかなりの強者であり、その方は副業でも課税業者になりますね。まあ、普通はそこまでかせげないでしょう。

2001年頃に、免税業者の基準が売り上げ3000万円から1000万円に引き下げられました。免税業者数は368万人から231万人になり、免税業者は全体の40%になるという数字が発表されています。それまでは消費税を払っていない業者の方が数で多いという結果だったのです。当時は「うちは株式会社ですから」みたいな理由で課税業者を名乗っていた人もいましたが、おかしな理屈であり、都市伝説としか言いようがなかったですね。まあ、それはいいでしょう。

私は、1000万円以下という免税業者という施策自体を再検討する必要があると考えます。税金の公平な負担という原則があるのなら、収入に関係なくルールに従って支払うべきです。消費税は、収益に正比例するきわめて公正な税金です。消費者にはあますところなく支払わせるのなら、業者も同様じゃないでしょうか。全業者の支払い義務があるとした上で、優遇措置を検討するべきです。

収入を500万円、そしてさらに中間の250万円を平均的な収益としたら、精算した支払い税額はその5%として12.5万円です。非課税業者が200万人としたら、2500億円となります。全体の税収12兆円の中でみれば少ないのですが、それでも2%程度の増収となります。もちろん、収入額の平均値はもっと少ないとも言えますが、でかくもなく、少なくもない規模ではないかと思います。ただ、徴収のための手間というか、経費が増えるとも言えるのですが、簡易的な計算方法を導入しつつ、オンライン化により、さほどの費用はかからないと思います。

大昔の3000万円のライン、1000万円のライン、いずれも「政治的な判断」とされていて、確固たる基準がありません。これを撤廃すると、必ず「零細企業を苦しめるのか」的な意見が出てきますが、苦しめているのではありません。本来、消費者が国に対して払ったと思っているお金を、自分のところにとどめないようにしましょうというだけのことです。本来の収入ではないものを「自分のもの」として扱うフィーリングが正しくありません。そして、少なくとも、サラリーマンの副収入、つまり生活の糧は本業の給料で得られている人にまで非課税を適用するという点は、過剰な優遇としか言いようがありません。

税の公平は絶対に守られていないといけないと思います。増税の話題で免税業者のことが出てこないことに、やっぱりどこか「選挙対策」が見え隠れしている気がします。