[開発プロセス#2]何のための何を目指したプロセスか?

開発プロセスにおけるアーキテクチャ設計として先日記事を公開しましたが、継続して記事を続けるにあたって、ヘッダに [開発プロセス#N] (Nはシリアル番号)を入れることにします。前回は大まかな話でしたが、今回は検討する開発プロセスの目的を定めます。今回は、当たり前の話ばかりだと思います。

開発において、いきなりプログラミングすることはまずないと思いますが、何らかの検討を経て実装に入ります。実装なくしては当然ながら完成しないので、実装、すなわちプログラミングは開発の中心と思われているかもしれません。しかしながら、実際に開発経験があると理解できることは、事前に検討して問題解決していることと、実装しながら問題解決に当たるのとでは、前者の方がはるかに効率的であり、出来上がったコードの質が高くなるということです。「仕様書をちゃんと書けよ」ということになる一方、仕様に関する成果物に労力をかけないまま実装に入ることもあります。これらの上流工程にどの程度時間をかけて、どの程度の成果物を得ればいいのかということの議論は昔から今に至るまで、そしてきっと未来永劫続くことと思います。ウォーターフォール形式など、開発プロセスが決まれば、1つのプロセスの終了と、検討結果に関する成果物とが対応することになり、いわば自動的に仕様書を書くことが前提になります。一方、仕様書を記載したり、あるいは変更結果を反映させる作業は決して小さな負荷ではありません。アジャイル開発のように、完全な仕様書を書くよりも動くコードを書くことを優先させる手法も出てきている一方、このことを都合よく解釈して「アジャイルはドキュメントは書かなくてもいい」と決めつける人たちがいることも事実です(アジャイル勘違い集#3)。しかしながら、こうした決めつけが出てくる背景には、設計の成果物の労力に見合う結果が得られるのかという懸念があるのではないでしょうか。

実装に入るまでのプロセスを重要視し、仕様書を作るという立場は崩しません。しかしながら、アジャイルソフトウェア宣言には「包括的なドキュメントよりも動くソフトウェアを、」とあります。包括的な、すなわち完全なドキュメントでないけども、設計する上で考えたアイデアや制約などがドキュメントとして参照できる必要があります。ではコードをしっかり書けばいいという考え方もあります。Googleへの注目が増大される時代に、「Googleでは仕様書ではなくコードを見る」のだというイメージが定着し、ここでも勝手な解釈になるのでしょうけど「仕様書はなくてもすごいシステムは作れる」と思ったと考えられます。また、コードは常に最新であるという主張は間違いはありません。しかしながら、コードはコードであり仕様ではありません。コメント欄に記述できる内容も限られていますし、コード上で明示的ではないあるいはその真髄に迫るには時間をかけて解析しないといけないような様々なノウハウが実装には注ぎ込まれているはずです。コードで仕様に関するコミュニケーションがとれるとしたら、その内容に精通したプログラマ同士だけでしょう。オープンソース開発では、コミッターの時間的制約などでそうした状況になりがちであり、単体テスト等のテストを自動化することと組み合わせれば、十分にワークする方法であることは多数のオープンソースプロジェクトから言えるのではないでしょうか。しかしながら、コードを読み解くということは、時間をかけて解析したプログラマ以外に可能かというと、ほぼ無理でしょう。顧客や発注側はそこまではしない、あるいはできないでしょう。「しない」理由は、それをやるくらいなら自分で開発できるから発注しないからです。プロジェクト管理者、あるいはユーザーテストの管理者、導入教育担当、こうした開発に関わる様々な人が、プログラマ並みにコードを読むことができるかといえば、能力的なことだけでなくビジネスに直面するコストの問題でできないと言えます。

受託開発では顧客の要望がコロコロ変わるようなことは普通にあり、これは「消極的なアジャイル」とも見ることができます。追加の開発に対しても費用が出ないことあるのに、ドキュメントの更新に追加の費用を請求する雰囲気は現場にはありません。こうして「使えないドキュメント」が山積みされることになるのですが、その使えないドキュメントでも、過去のある時点をキャプチャした情報として活用せざるを得ない場合もあるわけです。

こうした現在の開発プロセスにおいて、成果物として何が求められるのかを再考するのが、一連の[開発プロセス]記事の1つの大きな目的です。すなわち、ドキュメントに記述されることを、ドキュメントに対する負荷を可能な限り最小化したプロセスとして再考するのが目的です。以下、まとめてみました。

  • 仕様書は作成する必要がある。特に強くコミットしているプログラマ以外のコミュニケーションにはなくてはならない。
  • 仕様書が膨大になると、更新が滞り、最新の結果が反映されなくなる。仕様の変更に対してドキュメントの更新は必要だが、その負荷を最小化したい。

この次は、開発されるシステムがどうなることを意図しているのかということを記載します。こちらの方が先に記載すべきかもしれませんが、目的の話題が何度か続くとういうところです。