JavaScript一般のお話ですが、詳細はINTER-Mediatorがらみとなります。
まず、プロパティは、オブジェクトに対して自由に用意できるのですが、Object.definePropertyというメソッドを使えば、セッタ、ゲッタの実装ができます。IEのみ、このメソッドが限定された状況でしか使えないこともありますが、やはり複雑な事をするときにはセッタやゲッタを利用するのはきわめて自然な発送です。
ここで、オブザーバブルです。最近のJavaScriptフロントエンド系フレームワークではもはや実装されていて当たり前の機能です。MVCという点よりも、むしろオブザーバブルな方が重要な仕組みであるとも言えます。これは、フロントエンドなのでユーザインタフェースを構築することが大きな目的であることから来ます。ユーザインタフェース、つまりMVCのViewとModelの連動のために、イベントに対応するプログラムを書くという手法ではなく、イベントが自動的に伝搬されて行く仕組みが欲しい訳で、それをベースにすると、同一のエンティティにバインドした2つの要素が連動するとか、それをさらにはクライアント間で連動させるといったベースになるのです。ここを自動化できれば、アプリケーションの複雑さはそこそこ緩和でき、より手軽にアプリケーションの作成ができるようになると言えばいいでしょうか。
INTER-Mediatorでは、コンテキストに対する検索条件を、INTERMediator.additinalConditionというプロパティに記述することで、条件を追加できます。コンテキスト、つまりはテーブルへのアクセスにおいて、プロパティの値を条件として記述します。しかしながら、条件の記述においてはさまざまなパラメータが必要になるので、結果として、次の様な記述を行うのを基本にしています。
INTERMediator.additinalCondition["コンテキスト名"] = [{field: "フィールド名", operator: "演算子", value: "値"}];
連想配列や配列として解釈すると、きわめて階層が深いですが、必要な情報なので記録が必要です。右辺のオブジェクトの配列を指定できるので、単一のコンテキストで複数の条件を指定したり、あるいはもちろんのこと、コンテキストごとに追加条件を指定できます。
ここで、この追加条件を変更したときに、クッキーに記録させることを考え、なるほど、それならば、このプロパティのセッタを作ればいいのではないかと考えました。もちろん、大した実装でもないので、セッタやゲッタは簡単にできたのですが、セッタが呼ばれない事が時々あり、考え込んでしまいました。考えてみれば当たり前のことなのですが、既存のサンプルなどの動きが正しくなくなると、正しい答えに行くのに回り道をしてしまいます。
まず、以下のようにすればセッタが動きます。
INTERMediator.additinalCondition = {"context": [{field: "f1", operator: "=", value: "123"]};
しかし、以下のようにするとセッタは動きません。ようするに、サンプルの多くの書き方では、セッタは動かないのです。
INTERMediator.additinalCondition["context"] = [{field: "f1", operator: "=", value: "123"];
ここをえらく勘違いしていました。なぜ、後者はセッタが動かないのか? これは、additinalConditionプロパティそのものへのに対する代入をしていないからです。左辺の記述により、additinalConditionプロパティにアクセスするのでゲッタは動きます。そこで、オブジェクトがあれば取り出されて、そのオブジェクトに対して、右辺を代入しているので、additinalConditionプロパティ自体への代入はまったくしていないのです。そこから参照されているオブジェクトに対しての変更処理をしているので、additinalConditionプロパティのセッタは稼働しません。
結果的に、ここでの最下層にあるfieldプロパティなどを書き換えてもadditinalConditionプロパティのセッタが動くようにならないといけないわけでして、それを突き詰めれば、オブザーバブルな配列、オブザーバブルなオブジェクトが必要になってくるわけです。残念ながら、INTER-Mediatorではそこの実装はしていません。KnockoutやEmber.jsではそういう仕組みが用意されているのです。モデルに対するプログラミングインタフェースを持つとしたら、確かにオブザーバブルな配列は必要かもしれません。また、これらの代表的フレームワークに関わらず、オブザーバブルな配列の実装はかなりたくさん公開されています。
INTER-Mediatorに汎用的なオブザーバブルな配列やオブジェクトを組み込むのも、ある意味はいいのですが、その前に本来の目的に立ち返られないといけません。INTER-Mediatorはモデルをプログラマが定義しないと使えないのではなく、宣言的な記述で定義したコンテキストを仮想的に「モデル」として見る以上のとは通常はしなくてもかまいません。オブザーバブルな配列があれば、開発している私はいいのですが、利用者の直接的なメリットではないと考えます。
一方、プロパティの値を自動的にクッキーに入れれば、一見すると便利なのですが、アプリケーションで必要なのはむしろ、細かな記録と消去のような気がします。自動的に覚えさせるのは、確かにデモウケは良さそうですが、いくつかのサンプルに実装してみて感じることは「忘れてくれ!」と思う場面も多いことです。このあたり、どういう実装にするか非常に悩みます。今現在、セッタから呼び出されるようにしていますが、もしかすると、クッキーへの記録は明示的に開発者に記述してもらうのがいいのかもしれません。もし、現状のままだと、additinalConditionプロパティへの値の設定の書き方がきわめて限定される点も考慮すべきところです。この点はしばらく考えるつもりですが、ご意見があれば、FacebookのINTER-Mediatorのグループへどうぞ。