FileMaker Server 16より搭載のFileMaker Data APIとは?

FileMaker Data APIは、データベースへの読み書きの処理を、Web APIあるいはREST形式のAPIで利用できるものである。FileMakerデータベースを他のシステムと統合したり、Webアプリケーションのバックエンドとして使う場合には様々なフレームワークや言語と組み合わせ利用しやすい形態がREST APIと言える。FileMakerのREST APIについては、すでにアナウンスされていたとは言うものの、FileMaker Data APIがFileMaker Server 16で初めて製品としてリリースされ、利用できるようになった。本来はFileMaker Cloudに搭載されるものと思われていたが、Ver.16が先になったので、次のCloudのリリースには確実に搭載されるのだろう。REST APIはすでにサードパーティ製品はあるものの、FileMaker本体に搭載されたことは今後の製品を予測する上でも大きな出来事と考える。

FileMakerデータベースのWeb利用

FileMaker Pro/GOをクライアントとして利用するソリューションのバックエンドとして、FileMaker Serverを利用し、データの共有をスムーズにできるようにすると言うのがFileMakerのもっともメジャーな利用形態だ。一方、Webの発展が著しいのは言うまでもないが、FileMaker Serverに蓄積したデータをWebつまりWebブラウザーをクライアントとして利用できるようにするニーズもある。

FileMakerは20年近く前からWeb利用に取り組んでいる。初期のHTML拡張によるCDMLによるデータベース連動ページ作成はVer.4で搭載され、当初はかなり期待されたものの、簡単なソリューションで更新処理が複雑でない程度のものでないとかえって開発が難しく、Ver.7の時点で廃止された。Ver.7からしばらくはXSLTをベースにしたWebページ開発ができたが、こちらもVer.11までの搭載となり廃止された。標準技術をベースにしているとは言うものの、他のWeb開発とあまりに手法が違いすぎた。一方、Ver.5より搭載された初期のXML共有は現在ではCustom Web Publishing(CWP)として若干の機能更新はあるものの、現在のFileMaker Serverまで継続している。その後、PHPのクラスライブラリとして提供されたFileMaker PHP APIやそのバックエンドとしてのXML共有の拡張を経て、これらの機能は現在も利用できる。これに加えて、FileMaker Data APIが登場したのである。データの蓄積や取り出しだけを担うサーバー機能としては以上のような経緯があるものの、FileMaker Server 16では、CWPとFileMaker Data APIと言う過去からの全ての仕組みが搭載されていることになる。CloudではCWPは搭載されず、FileMaker Data APIのみとなっている。

FileMaker Pro/Advancedで作ったレイアウトをそのままWebブラウザーで表示するといった仕組みのWeb対応もなされてきた。Instant Web Publishing(IWP)は若干の改良はされてきたもののVer.12で終了となり、Ver.13以降はWebDirectとして、完成度を高めてきており、Ver.15では動きもスムーズになり、システム開発の1つの手法として実運用可能な状況になっている。ただし、Ver.13でGOからの接続がコネクション数に応じたライセンス体系を取るようになると同時に、WebDirectもライセンスが必要となった。従来のIWPは任意の接続は可能であったが、パフォーマンスの問題で数十程度のクライアントの同時接続までとなっていた。

Webアプリケーションに繋がる手法としては、Ver.15では接続数に応じたライセンスが必要となるWebDirectと、サーバーのパフォーマンス次第で接続ライセンスの不要なCWPの両方が組み込まれている。FileMakerのレイアウトがそのままWebブラウザで見えて利用できるのがメリットかデメリットかは簡単には結論は出せない。ソリューションの設計と運用によるものである。HTMLでWebクライアントを構築したい向きにはCWPが必要になるが、一方でライセンス費用を気にしなくてもいいといったコストに偏った見方をされている場合もある。

ライセンス体系は今後どうなるのか?

FileMakerはVer.13以降、接続クライアントに応じたライセンスということを重視した製品系列へとシフトしてきており、FLTというライセンス体系の追加や、IWPの廃止やGOの接続ライセンス必須化を含めて、CWPのような自由な接続という仕組みを排除してきている。加えて、年間ライセンスへとユーザーをシフトさせようとしている。

そうなると、1つの重要な命題は「CWPがいつまで使えるのか」ということに集約できる。現行のライセンスモデルにマッチしない手法だけに、いつ、機能としてなくなっても不思議ではないのである。しかしながら、それに替わる仕組みがなくなることで、システム構築の自由度がそがれることは明白である。CWPに替わるものが、Ver.16で搭載されたFileMaker Data APIとなるが、「トライアル」ということで、今後の展開を見てライセンス形態を決めようとしている意図が見えてくる。正式にリリースされたことで、まだアナウンスはないもののCWPの継続が中止される可能性はゼロではなく、結果的にどのバージョンまで使えるかという問題に帰着する。そして、FileMaker Data APIに関して、どういったライセンス体系への統合を、どのバージョンで行うかということに注目することになる。Ver.16現在、FileMaker Data APIは自由にアクセスできる状態であるが、FileMakerの製品ライセンス体系を考えれば、「いつかはお金を取る」という姿勢は容易に感じとれるのである。

モダンなデータベース利用が可能なFileMaker Data API

ちなみに、なぜ、CWPがFileMaker Data API置き換わると予想されるのかについてだが、総じてFileMaker Data APIの方がモダンであると言えるからである。サーバーにリクエストを送って結果を得るのは昔からあるXML共有でも現在のFileMaker Data APIでも同じであるが、XML共有はURLに対してXMLで結果が返るのに対して、FileMaker Data APIではHTTPのメソッドを伴うきちんと定義されたAPI動作に対してJSONで結果を返す。データの内容的には、ポータルか、別のTOのフィールドなのかを判別するという点では、XML共有は確実にできなかったこともあった。その後の改良でできるようにもなったが、パフォーマンスが悪くなった。

HTTPのメソッドとURLの組み合わせで動作を記述し、JSONで得られるFileMaker Data APIの方が、様々な用途に展開しやすいことも事実だ。機能的には、レイアウト情報まで取得できるCWPの方が勝るものの、FileMaker Data APIは必要最小限の機能になっており、むしろデータ処理に特化されてシンプルに使えることも、学習しやすい点もあり、実運用に即した進化であると言える。

筆者が現在、開発を進めているWebアプリケションフレームワークのINTER-Mediatorも、もちろん、FileMaker Data APIへの対応を行う予定である。CWPがなくなることを見越しての対応である。そこで基礎部分の足固めとして、PHPで使えるクラス「FMDataAPI」を開発し、こちらは単独でMITライセンスのオープンソースソフトウェアとしてGitHubで公開した。こちらの開発で得られた知見を元に、しばらくはFileMaker Data APIについての情報を本ブログで提供することにする。