FileMaker Serverのアップデータがフリーズする理由

FileMaker Server 14.0.4bのアップデータがリリースされました。このところ、アップデートが頻繁にありますが、いざアップデートしようとすると、最初の部分でフリーズしてしまうことがあります。フリーズと言っても、マウスカーソルがレインボーになってしまう現象です(画面ショットではレインボー状態は撮影できないので、以下の図は普通のポインタになっています)。

shot3215

ちなみに、この現象は、14.0.4bのアップデータに限らず、13のアップデータでも発生することがあります。もちろん、いつまで経ってもこのまま進みません。さて、なんででしょうか? アクティビティモニタを見ると、パッチアプリケーションのCPU稼働率が100%近くになっています。ということは、本当にフリーズか、適切でない処理待ちをしていることが考えられます。

そこで、ターミナルを起動して、プロセスを見てみます。パッチアプリケーションのプロセスには「Patch」という特徴的な文字があります。以下のコマンドで、プロセスIDは27530だとわかります。(以下、コマンドラインの出力が長いので折り返して見えるようにしておきますが、見づらい点はご容赦ください。)

$ ps jax|grep Patch
root 27530 1 27523 0 0 S ?? 0:15.60 /Volumes/FileMaker Server 14.0.4b Patch 1/FileMaker Server 14.0.4b Patch.app/Contents/MacOS/FileMaker Server 14.0.4b Patch

次に、このプロセスが別のプロセスを起動していないかをチェックします。すると、以下のように、「/bin/sh /Users/msyk/Library/Application Support/1358455 0」なるプロセスがあります。最後の方の数値は起動ごとに違うものがつけられ、正常終了すると消されているファイルです。

$ ps jax|grep 27530
root 27530 1 27523 0 0 S ?? 0:15.60 /Volumes/FileMaker Server 14.0.4b Patch 1/FileMaker Server 14.0.4b Patch.app/Contents/MacOS/FileMaker Server 14.0.4b Patch
root 27545 27530 27523 0 0 S ?? 0:00.05 /bin/sh /Users/msyk/Library/Application Support/1358455 0

これは/bin/shつまり引数をシェルスクリプトとして実行しているということです。catコマンドで、ファイルパスにスペースがあるのでダブルクォートで囲むなどの対処をして、中身を読んでみます。パッチアプリケーションは、このプロセスが終了するのを、おそらく単なるループで待っているためにフリーズするのでしょう。psコマンドである種のプロセスが存在するかどうかを2秒ごとにチェックし、調べているプロセスがなくなれば、スクリプトを終了します。

$ cat “/Users/msyk/Library/Application Support/1358455”
#!/bin/sh

cd /Library/Application\ Support/FileMaker/FileMaker\ Server
./launcher -stop

while [ “`ps auwwx | grep -e fmserver_helperd -e fmsib -e fmslogtrimmer -e fmxdbc_listener -e fmsased -e httpd | grep -v grep`” ] ; do
sleep 2
done

whileの行を見ると、psコマンドの結果に、fmserver_helperd、fmsib、fmslogtrimmer、fmxdbc_listener、fmsasedという文字列があるかを調べています。つまり、FileMaker Serverの様々なプロセスが起動した状態なのかを調べています。さらに、httpdというプロセスまで存在するかを調べています。アップデートは、FileMaker Serverを停止させて行うようにということで、FileMaker関連のプロセスがなくなっているという条件はまあいいでしょう。ちなみに、FileMaker Serverのプロセスを事前に全部止めておくには、以下のコマンドでできます。

sudo launchctl unload /Library/LaunchDaemons/com.filemaker.fms.plist

しかし、httpdとなると、何らかのきっかけで動かしてしまっているかもしれません。あ!そういえば、Server.appで色々試したぞと思ってチェックすると、Server.appのソフトウエアアップデート、キャッシュ、Xcode Serverあたりがhttpを使っていました。しかし、Server.appは、それらのプロセスをオフにしても、httpdの稼働を止めません。仕方ないので、sudo launchctl unload <plistファイル>で順次落として、やっとFileMaker Serverのアップデータが動くようになりました。ちなみに、こうしたデーモンは、launchctlで起動しているので、killしてもすぐに再起動されます。そこで、/System/Library/LaunchDaemonsや、/Library/LaunchDaemonsに該当するファイルを探すわけですが、Server.appについては、/Applications/Server.app/Contents/ServerRoot以下の、/System/Library/LaunchDaemonsや、/Library/LaunchDaemonsにあるplistファイルを利用してデーモンを起動しています。これらのファイルから該当するhttpdを起動しているものを探して落とさないといけません。チェックすべきplistファイルのある場所は文中に記載しましたが、見づらいでしょうから以下に列挙します。

/System/Library/LaunchDaemons
/Library/LaunchDaemons
/Applications/Server.app/Contents/ServerRoot/System/Library/LaunchDaemons
/Applications/Server.app/Contents/ServerRoot/Library/LaunchDaemons

しかし、一番の問題は、「httpdが起動していたらアップデートをしない」という仕様です。つまり、結果的にFileMaker Server以外のhttpdの起動を許さないという仕様に問題があります。Server.app自体が色々なサービスでhttpdを使うのですが、80番ポートの取り合いになるのは確かにまずいでしょう。しかしながら、FileMaker Serverのインストーラーは、自分自身のhttpdのポート番号を指定することで、他のサービスとの同居の可能性を探っています。しかし、このスクリプトを見る限りは、「FileMaker Serverが起動したhttpd」ではなく、単に「名前がhttpd」のプロセスを探しているにすぎません。つまり、FileMaker Server以外でhttpdを使いっていればトラブルが発生する仕様なのです。これでは仕様の上で矛盾があると言えるでしょう。

もちろん、特定のサーバーではFileMaker Serverしか動かさないという前提でもそれはそれで構わないと思いますが、だったら、LinuxのVMで動かすようにして欲しいというのが総意ではないでしょうか。OS XとWindowsで、アプリケーションみたいなインストーラでセットアップするサーバーはもはや古さを感じます。現在のシステム構築環境にマッチしない仕様を早く改善しないと、先頭集団からさらに引き離されるでしょう。